がんの新たな治療法として、光免疫療法が注目を浴びています。テレビ朝日「グッドモーニング」8月25日で取り上げられましたので紹介したいと思います。
光免疫療法 近赤外線照射による画期的ながん治療
光免疫療法は、まだ研究段階のものですが、がんの画期的な治療法として注目を浴びています。
Q.現在、行われているがん治療は?
現在、がん治療と言えば、いわゆるがんの3大療法と呼ばれている手術、放射線治療、抗がん剤(化学療法)が主な治療法です。
これらの治療法には、いくつかのマイナス面があります。手術は体への負担が大きいですし、放射線治療、抗がん剤は、がん細胞以外の正常な細胞も傷つけ、副作用もあるといことです。そのため、たとえがんを取り除いたとしてもがんの後遺症に苦しむケースもあります。
こういったことから、世界中の研究者ががんの新たな治療法を見つけようと、日夜研究に励んでいます。そこで注目を浴びてきたのが、今回の光免疫療法です。この治療法は4年前のオバマ大統領の一般教書演説でも紹介され、アメリカでも注目のがん治療法です。
光免疫療法を開発したのは、日本人を中心とした研究グループです。その日本人というのが、アメリカ国立衛生研究所の主任研究員 小林久隆さんという方です。小林さんは、京都大学大学院を卒業後、日本で11年間、放射線科の診断医をしていました。その時に放射線の副作用に苦しんでいるがん患者の方をみて、なんとか副作用のないがん治療はできないものかと思うようになったそうです。そのようなことがきっかけでアメリカに渡り、がん研究を行うことになったといいます。そして約10年かけてようやく、光免疫療法の発表するまでに至ったということです。
Q.光免疫療法の特徴とは?
光免疫療法の特徴は、なんといってもがん細胞のみを殺すといった点にあるといいます。その結果、副作用がなく、副作用に苦しまなくて済むそうです。
Q.光免疫療法のメカニズムとは?
光免疫療法のメカニズムは、免疫系が絡んでいるのでちょっと複雑です。
通常、がん細胞は、体内では一種の異物として認識されます。そのため、免疫細胞が攻撃することで排除されます。しかし、がん細胞は、免疫細胞から攻撃されないようにする特性をもっています。このメカニズムは次の通りです。
がん細胞が制御性T細胞を呼び寄せる
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がん細胞はその制御性T細胞を操り、免疫細胞を眠らせる
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免疫細胞からの攻撃がなくなり、がん細胞が増殖する
このメカニズムでがん細胞は増殖していきます。
光免疫療法では、この眠ってしまった免疫細胞を目覚めさせるものです。
そのメカニズムは次の通りです。
制御性T細胞に結びつく性質を持つ抗体(新薬)を点滴で投与します。
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制御性T細胞に抗体が結びつく
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外から近赤外線を制御性T細胞が寄っているがん細胞に照射する
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化学変化を起こして抗体と結びついた制御性T細胞が破壊する
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制御性T細胞が破壊されたので免疫細胞が目を覚ましがん細胞を攻撃する
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がん細胞が消滅
つまり、この光免疫療法は、もともと人が持っている免疫細胞でがん細胞をやっつけるという治療法だということです。
今回の光免疫療法は、マウスによる動物実験によるものです。
マウス実験では8~9割が完治したといいます。
次のようなマウス実験で、この治療法のさらにスゴい点が分かりました。
4ヶ所にがんが転移したマウスに抗体を投与後、1箇所だけに近赤外線を照射するという実験です。その結果、わずか1日で照射したがん細胞以外の残り3箇所のがん細胞も激減するという結果となりました。
これは、目覚めた免疫細胞が他のがん細胞のところへも行き、がん細胞を攻撃したと考えられるそうで、これはつまり、転移がんに対しても、とても有効な治療法だといいます。
治療に使われる近赤外線は、テレビのリモコンに使用されているもので、人体に照射されてもほとんど悪影響はないといいます。
光免疫療法 実用化や費用は?
Q.人への実用化はいつ頃に?
まずは、3年後の臨床実験開始を目指しているそうで、アメリカでの実用化は、5~6年後を目指しているそうです。
残念ながら日本での実用化は、さらにそのあとということになるようです。
Q.費用は?
制御性T細胞に結びつく性質を持つ抗体(新薬)は、保険適用外の場合は、数万~十数万円と考えられています。近赤外線については、ほとんどお金はかからないものだそうです。
Q.治療期間は?
通常、がん治療といえば、入院を含めて長期に渡るケースが多いものですが、この光免疫療法の場合は、2~3日の通院で済むと考えられています。
これは、点滴と近赤外線照射だけなので、メスを入れるわけでもなく、副作用もないからだそうです。
このように光免疫療法がこれまでにない画期的な治療法として期待されています。
光免疫療法のより早い実用化が切に望まれています。